天井

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私オススメの【米澤穂信】小説作品

なんだか久しぶりに米澤穂信さんの本を読んだら、少し熱が出てしまった。

なので今回は、私のオススメの米澤穂信さんの作品を紹介しようと思う。

 

 

犬はどこだ

ぞっとするような探偵小説を読みたい方にオススメ。

最後のどんでん返しが本当に怖すぎた。

米澤穂信さんの作品は、どんでん返しを意識した作品が多くあるが、中でもこれはかなり恐怖を感じた。 

犬はどこだ (創元推理文庫)

犬はどこだ (創元推理文庫)

 

あらすじ

諸事情により銀行員をやめた紺屋は、探偵事務所を開業した。

犬探しを専門にしようと考えていたのだが、開業早々にやることになった依頼ははなんと、人探しと古文書の解読。

探偵が憧れだったという半田に古文書の依頼は任せ、紺屋は失踪事件を追う。

一見すると関係ないように見えるこの二つの依頼が、妙に関わり合って進んでいく物語。

さらに徐々にきな臭さがあらわになっていく失踪事件。

果たしてその結末は

 

オススメポイント

陰のある主人公

諸事情により銀行員をやめざるを得なかった主人公。

そうこの主人公は何もやりたくて探偵を始めたわけではないのだ。

そういうわけで物語中でも何かとこの主人公には陰がある。

さらに最初は人探しに乗り気でなかった主人公だが、失踪した人に自分と同じ陰を見つけ、徐々に仕事にやる気をだしていく。

こういった陰のある主人公が好きな人には魅力的作品である。

 

地道な探偵業務

捜査は足で、と言われるように、地道に人に話を聞きながら物語は進んでいく。

そうやって一歩一歩事件の真相に近づいていく感じがたまらなく良い。

さらに向こうから勝手に情報が舞い込んで話が進んで行ったりすると、主人公と一緒になって思わずにやりと笑ってしまう。

 

徐々に明らかになるきな臭さ

調査を続けるにつれて明らかになっていく依頼のきな臭さ

これにより物語の途中から急き立てられるように話を読み進めてしまう

そして最後に待ち受ける真相。

ぞっとすること間違いなしの名作だ。

 

「犬はどこだ」が好きな人にオススメの作品

「犬はどこだ」の淡々と進むストーリー、厭世的な主人公。

そんな物語が好きな人には追想五断章」もオススメの作品だ。

「犬はどこだ」ほどのどんでん返しと恐怖はないが、同じようなテイストの作品となっている。

 

 

 

ボトルネック

「どうしようもないことは、受け入れるしかない」がモットーの主人公。

この言葉に共感できる人にオススメしたい。

痛烈な物語が展開される。

ボトルネック (新潮文庫)

ボトルネック (新潮文庫)

 

あらすじ

恋人の死を弔っていた主人公は、突然パラレルワールドへと飛ばされる。

その世界では、自分が存在する代わりに、生まれなかったはずの姉が存在していた。

自分ではなく姉が存在するこの世界は、自分の世界とどのように違うのか。

自分とは正反対のように明るい姉に誘われ、主人公は二つの世界の間違い探しをしていく。

 

オススメポイント

暗い主人公

主人公が受け身でとにかく暗い。

といってもそれにも理由があって、両親は互いに不倫しあっていて仲最悪。

そのあおりを受けて、夢も希望もないような主人公となっている。

そんな主人公に共感できる人にはぜひともこの作品を読んでほしい

 

明るく聡明な姉

主人公に引っ張られて暗くなる物語を、明るく引き戻すのが、主人公の姉だ。

受け身な主人公に代わり、彼女はその聡明さでこの物語を明るく、ぐいぐいと牽引していく。

 

解き明かされていく主人公の心情

そんな明るい姉と関わる中で、主人公は否が応でも気づかされる。

二つの世界の間違い探しの答えに。

これはそんな痛烈な物語だ。

 

 

 

儚い羊たちの祝宴

ダークな短編集。

サイコパスじみた人たちの事件集となっている。

そういった作品を読みたい方にぜひとも勧めたい作品だ。

また、物語最後で語られるどんでん返しもぜひとも楽しんでほしい。

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

 

オススメポイント

短編集

ダークな雰囲気

物語最後のどんでん返し

 

 

 

遠回りする雛

有名な「古典部」シリーズ。

古典部シリーズは青春と謎解きの融合がなされており、おおよそ万人受けする作品だと思う。

そしてこれはその古典部シリーズの中でもオススメの一作だ。

シリーズとは言いつつも、古典部シリーズは一巻ごとで完全に完結しており、どこから読み始めても全く問題ない。

実際私もシリーズ3、4作目あたりから読み始めたクチだが違和感なく物語に入り込めた。

というわけで、古典部シリーズをまだ読んだことがなくて、これから読み始めてみようかという方には、あえてまず「遠回りする雛」を勧めたい。 

遠まわりする雛 (角川文庫)

遠まわりする雛 (角川文庫)

 

作品概要

高校一年生。古典部という部活に所属している部員たちの、新学期(古典部入部直後)から、春休み(約一年後)までに起きた出来事を、それぞれ切り取って描いた作品。時間経過による人間関係の変化を描きたかったという。

ミステリは、日常ミステリ(日常で起きるちょっとした謎を解くミステリ)系。

また、事件と部員たちの感情がうまく結びついており、青春ミステリと呼ぶのにふさわしい内容となっている。

 

オススメポイント

短編集なのに繋がりのある話

「遠回りする雛」は短編集である

だが、それだけではない。

短編どうしでも話がつながっているのだ。

以前の短編で保留された答えが、その後の短編で明かされるのは感慨深いものがある。

 

日常ミステリ

短編中いくつかのミステリについては、題材が実際に日常で起こりそうなものとなっている。

殺人事件とかとは違って、身近な謎だけに、自分でもすこし考えたくなってしまう。

主人公たちと一緒に謎を解こうと考えるのは、純粋に楽しい。

 

青春ミステリ

そしてなんといっても一番のオススメポイントはこれだ。

この作品は物語が、ミステリと感情をうまく融合させたつくりになっているのだ。

つまり、事件を解決していくことで、古典部員の感情にもせまることになっていて、これがまたなんともせつないのだ。

それは、事件は解決できても感情に答えはないからだ。

これが事件後になんとも言えない余韻を残す。

私が米澤穂信さんの作品にはまったのもこれが大きいかもしれない。

 

 

 

クドリャフカの順番

古典部シリーズの中では、これが私の一番好きな作品かもしれない。

クドリャフカの順番 (角川文庫)

クドリャフカの順番 (角川文庫)

 

あらすじ

高校の文化祭を描いた作品。

古典部は文化祭で文集を販売しようとしていた。

しかし発注ミスにより文集が大量に届いてしまった。

このままでは大赤字である。

なんとしてでも文集を売らなければならない

そんな感じのミッションを一応は持ちつつ、古典部員は各々文化祭へと繰り出すのであった。

 

オススメポイント

多視点から楽しむ物語

クドリャフカの順番」は、文化祭を描こうとした作品である。

そのため様々な角度から文化祭を描くために、視点が古典部員各々に飛び移りながら物語が進行していく。

これがなんとも楽しいのだ。

古典部員それぞれで、それぞれの物語が進行して、そのどれもが目を離せない。

それでいながら、それぞれの部員の行動・物語がきれいにかみ合いながら、文化祭・文集を売るという全体の物語が進行していく。

本当に秀逸だと思う。

 

文化祭と様々な題材

この文化祭では、本当にいろんな題材が扱われている。

  • 発注ミスの大量の文集を売ること
  • 漫研の内部論争・譲れないもの
  • お料理大会での熱いチームバトル
  •  怪盗事件
  • 凡人の探偵役への挑戦
  • 才能・人に期待するということ

よくこれだけ詰め込んで、きれいにまとめ上げているものだと思う。

 

青春ミステリ

そしてこの作品にも「古典部」シリーズの目玉ともいえる青春ミステリ要素が、きちんと盛り込まれている。

ミステリと感情の融合。

事件は解けても、感情には答えがない

なんともいえない余韻が残る

 

 

 

ふたりの距離の概算

二年生になって後輩がやってきた古典部の話。

日常ミステリが存分に楽しめる作品となっている。

後味はなんともせつない。

ふたりの距離の概算 (角川文庫)

ふたりの距離の概算 (角川文庫)

 

あらすじ

二年生になった古典部に後輩がやってきた。

だが、その後輩が突然、やっぱり古典部には入部しないという。

どうやらある古典部員の行動が問題だったらしいのだが、一体何があったのか。

一つ一つ記憶をたどりながら、後輩が入部しないという理由を探していく。

 

オススメポイント

短編集でありながら長編物語

この作品も、全体では「ふたりの距離の概算」という作品として仕上がっているが、一つ一つの章は短編ミステリとなっている。

そしてその短編の中に、後輩が入部しない理由のヒントが隠されているのだ。

短編ミステリとして楽しみつつ、長編ミステリとしても楽しめる良作である。

 

日常ミステリ

そして、その短編で扱われているのが、ほんとにどこにでもありそうな日常の謎なのだ。

言ってみれば単なる疑問やクイズのようなものに近い。

だからこそ、一緒になって謎解きをしてみると面白い。

また、この作品は特に日常に力が入れられているように感じた。

後輩がなかなかいい味を出していて、古典部員の日常を楽しむだけでも十分に面白い。

 

青春ミステリ

短編中では日常ミステリが楽しめる一方で、作品全体としては後輩が入部しない理由を追うといういささかデリケートな問題を扱っている。

そしてその理由はやはりデリケートなことが問題となっていた。

このギャップも本作の魅力の一つだろう。

 

注意点

この作品は後輩の話ということもあって、今までの古典部シリーズの話が作品中にかなり登場する。

そのためこの作品を読む前に、他の古典部シリーズを読んでおいた方がより楽しめると思う。

 

 

古典部」シリーズについて

古典部」はシリーズものだが、一巻ごとで話は完全に完結しており、どの作品から読み始めても問題ない構成になっている。

だから、シリーズ物は、出版順に読みたいという方も安心して、読んでみてほしい。

(出版順に読むことを勧めないのは、実はシリーズ一作目「氷菓」の評価が、私の中で高くないからでもある)

ちなみに私も、古典部シリーズがシリーズものだと知らずに3、4作目あたりから読み始めたクチである。

私もシリーズ物は出版順に読みたいと思う派なのだが、この古典部シリーズを読んで驚いた。

物語だけでは古典部シリーズの出版順が全く判別できなかったのだ。

それくらい、きちんと一巻ごとで話が完結している。

ただ、作品の中でシリーズ一作目「氷菓」だけはやたらと話に上がり、やたらと持ち上げられる。

しかしそれが逆に、昔すげーことあったんだなあと感じさせて、なんだかわくわくするのだ。(「氷菓」の評価が低いのは、このせいでやたらと期待値が上がったせいもあるかもしれない)

もちろん「氷菓」の話は登場人物の会話でちょっと出るだけでストーリー自体に関わりはないので「氷菓」から読む必要は全くない。

こういう経緯もあって、私は古典部シリーズを、「氷菓」から読み始めることは特には勧めない。

 

古典部シリーズ出版順と読むオススメ順

氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」「遠回りする雛」「ふたりの距離の概算」「いまさら翼と言われても」

 

どの順番で読んでも問題ないとはいったが、

「いまさら翼と言われても」は、古典部員の内情がかなり話題となっているので、後に読んだ方がいいかもしれない。

ふたりの距離の概算も、後輩の話なので、後回しにした方がいいだろう。

 

それを踏まえるとやはり、

最初に「遠回りする雛」を読んでからは、出版順に読むのが一番オススメかもしれない。

 

ちなみに作品評価としては、「氷菓」と「いまさら翼」はちょっと評価低めで、「愚者のエンドロール」は十分に面白かったと感じた。

ただし、「いまさら翼」は、単なる古典部の短編集となっているため、 良作あり、普通かなあり、といった感じだ。

 

最後に

文字数が多くなってしまったので、今回のオススメ作品紹介はここまでにしようと思う。

ここで紹介した作品以外にも、米澤穂信さんの作品には、「太刀洗 万智」シリーズや、「小市民」シリーズなどがある。

もしここで紹介した作品が面白ければ、手を出してみるのもよいだろう。